農の言葉

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 “肥やし”というのは肥料のこと。ちょっと前は、遊びは芸の肥やしとか、私たちのまわりでよく使われることばでしたが、最近あまり耳にしない。土に触れる機会の少なくなった現代人は、“肥やし”の意味がもうひとつピンとこないのかもしれませんね。
やっぱり最近あまり耳にしないことばに“培う”というのがあります。じっくり育てることをいいますが、“土をかう(養う)”から生まれたことば。これも“肥やし”同様、いってみれば農のことば(笑)。

“肥やし”も“培う”も、ゆっくりじっくり、自分のなかに何かをためこんでいく。あるいは、養っていくことを表しています。静かにため込んでおいた養分が、やがてたわわな稲穂へと実を結んでいきます。
人と人が出会い、結ばれていくというのも、同じことなのだろうと私は思っています。これまで家族をはじめ、いろんな人に出会ってきた。喜びもあり、葛藤もあった。つらい別れもあったかもしれない。それはでも、みんなその人の養分となる“肥やし”そのもの。その肥やしがつぎに会う人を選ばせ、だれかとともに生きるということの土台にもなるのです。

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 でもいまはみんな、すぐに効く、ちょうど化学肥料のような“肥やし”を求めすぎるのではないかなと思ったりもしています。無駄を極力はぶき、ピンポイントで希望の場所へすぐに行こうとする。
学校には学校の社会、会社には会社の社会があったように、結婚相談所もひとつの社会。そこにはたくさんの、異性のことについてあなたを養う“肥やし”の機会がたくさんあります。会っても結局無駄、なんてことばはいちど飲み込んで、ともかく会ってみる。やっぱり無駄におわるかもしれないけど、その無駄さえもあなたの養分となる。人と人の出会いってそういうものではないでしょうか。
人と人が会うという“肥やし”。これはなんといっても有機肥料ですから、ちょっとくらい肥やしが効きすぎて困ることもありません。ゆっくりじっくり、遠回りを怖れないで。

2015年7月18日 11:33 長井 春美

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